コロナ禍における都内の区分・投資用マンション売却への影響
2019年終盤に中国で発見され、翌2020年に全世界的な流行をみせた新型コロナウイルス感染症は、各国の不動産業界にも影響を与えています。区分・投資用マンションの所有者にとって、コロナ禍における売却への影響は不動産業界の先行きとともに大変に気になるところでしょうが、東京都内については現状でどのような影響が出ているのでしょうか。
コロナ禍前までの都内のマンション市場は好調だった
区分・投資用マンション売却への影響を推し量るためには、不動産の市場動向を調査している会社が発表している調査結果の内容を参考にするとよいです。調査結果を詳細に見ると、コロナ禍がはじまるまでは東京都内の区分・投資用マンションの市場は新築・中古ともに比較的好調に推移したことがわかります。
コロナ禍前までは販売も順調で、価格も少しずつ上昇していました。これは、当初2020年に予定されていたオリンピックとパラリンピックの開催にともなって、都内の各所で建築ラッシュが起こっていたことが主な要因で、新築の区分・投資用マンションの価格上昇に引っ張られる形で、中古物件の価格もあがっていきました。
日本で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されたのは2020年1月ですが、この時点では中古マンションの価格はバブル経済期のピークだった頃に匹敵する水準になっていました。もし、この時期までに区分・投資用マンションの売却を決断していれば、多少強気に価格を設定しても比較的早期に売却先を見つけられた可能性があります。
緊急事態宣言で市場は大幅に縮小するも価格への影響は軽微だった
2020年のマンション市場がもっとも大きな影響を受けたといえるのが、4月7日に当時の政府が発出した緊急事態宣言です。この宣言は5月25日に解除されましたが、この間の4月と5月の販売戸数は中古で3月までの半分以下、新築に至っては3月までの3分の1以下にまで落ち込み、他の商品市場の例にもれず、マンション市場業界も大きく縮小しました。これは、緊急事態宣言の期間中に多くのマンション販売会社が営業活動の休止を余儀なくされたことなどが影響しています。
しかし、価格については中古は減少したものの軽微なものにとどまり、新築は3月までより上昇していました。2008年のリーマンショックで不動産の価格が大きく下落したことを踏まえ、緊急事態宣言のもとでは価格が下落すると予想していた者は少なくありませんでしたが、まったく異なる結果が出ました。実は、リーマンショック当時は多くのディベロッパーが在庫の値下げ販売に踏み切っており、これが価格を押し下げる要因となっていました。
この経験を経て、現在はディベロッパーの多くがマンション販売以外の事業も手掛けており、値下げをすることなく販売を維持できる状況にあります。リーマンショック後の10年あまりの期間でマンション市場は急激な外的要因の変化に耐えうる構造に変わっており、これが価格の下落が抑えられた要因になっています。
緊急事態宣言解除後すぐに元の水準に戻ったが油断は禁物
東京都内の区分・投資用マンションの販売戸数や価格は、2020年6月以降はほぼ緊急事態宣言前の元の状況に戻りました。新築物件に着目すると、価格は9月と11月に2019年の平均を若干下回った程度で堅調に推移しており、販売戸数に至っては緊急事態宣言後を上回る実績を記録しています。
区分・投資用マンションの売却を考えている場合、コロナ禍前と同様に少し強気の価格設定をしても、購入希望者があらわれる可能性は充分にあるといえるでしょう。しかし、2020年末の時点で新型コロナウイルス感染症の治療法や予防法はまだ確立されていません。
先行きは不透明であり、さらなる大流行によって経済活動を縮小せざるを得なくなる状況が起きる可能性が充分にあります。東京オリンピック・パラリンピックは2021年7月に開催する予定ですが、中止される可能性も残っています。
現時点では値下げせずに購入希望者を待てる状況を維持できているディベロッパーが多いですが、経営資源が少しずつ削り取られていっているディベロッパーは少なくなく、経営環境が悪化すると2008年から2009年にかけてと同様に値下げ販売が行われる恐れがあります。売り時を逃すと充分な利益を得られなくなるので、マンション市場の動向はこまめにチェックしておきましょう。
コロナ禍中の東京都内の区分・投資用マンションは、緊急事態宣言発出期間中に販売戸数が減少したものの、価格面への影響は大きなものにはなりませんでした。コロナ禍前と同程度に好調な状況は継続しており、売却を考えている人にとってはチャンスが続いているといえますが、コロナ禍は長期化する可能性が高くて先行きは不透明です。マンション市場の動向をこまめにチェックし、売り時を逃さないようにしましょう。